なぜリキむのか
首や肩、背中などがこって痛い…という
愁訴は多いものです。
ただ実際に触診させていただくと、この
身体の硬さの原因は、コリではなく緊張
ですね…ということがよくあります。
コリは専門用語で硬結といいます。
血行不良により、筋肉の一部に老廃物が
溜まってしこりになったものです。
押すと痛んだり、離れた場所に響くよう
な感覚を催したりします。
硬結ができやすい場所は、筋肉を繰り返
し使い過ぎている箇所であったり、偏っ
た姿勢により体重の負荷がかかりやすく
なっている部位だったりします。
コリに対する対策は、温めたり動かした
りして筋肉の血流を良くし、溜まった老
廃物を流してやることです。
これに対して筋肉の緊張は無意識に身体
がリキみ、力が抜けなくなっている状態
です。
これは広範囲にあらわれることも多く、
全身の筋肉が緊張している方もおられる
くらいです。
「身体の力を抜いてみてください」と伝
えたときに、力を抜くことができる場合
と抜くことができない場合があります。
力が抜けない場合は、自律神経が緊張モ
ードになっている可能性が高いです。
自律神経は、暑いときに汗が出たり、食
事のときに自然に胃液が分泌されること
など、意識しなくても自動的に行われる
身体の調整を担う器官です。
そのため不調をきたしたときも、自ら意
識して正常に戻すことが難しいのです。
その自律神経が緊張モードになるときは
闘争・逃走反応と呼ばれる変化が身体に
もたらされています。
その変化は、元々は非常事態に対応する
ために身に備わったものだと考えられて
います。
例えば、山のなかでクマに襲われた状況
では、瞬時に戦うか逃げるかしなければ
なりません。
自律神経が緊張モードに切り替わると、
自動的に心拍数、血圧、血糖値が上昇し
末梢血管は収縮します。
これにより、速やかに末梢の筋肉にまで
血液がいきわたり、闘争や逃走を可能に
するというわけです。
日常生活でこのような生命の危機に遭遇
する人はあまりいないはずなのに、緊張
モードが続いている人がこんなにも多い
のはなぜでしょうか。
生活のなかでストレスが多いことがその
原因ではないかといわれています。
緊張モードは本来、危機が去ったら解除
されるものですが、日常的なストレスに
対して発動されている場合は長期にわた
ってこの状態が継続してしまい、様々な
体調不良を引き起こすことがあります。
動悸、高血圧、胃痛、便秘・下痢、筋肉
の過緊張などです。
リキみを自分で解除できない方は、意識
してリラックスできる環境を整える必要
があります。
お休みの日は仕事のことは一切考えない
とか、スマホは見ないなどの対策を考え
ましょう。
運動よりも、呼吸法やマインドフルネス
などの習得がお薦めです。
鍼灸で治療することもできますが、同時
に生活習慣を見直すことも必須で、過労
や睡眠不足がないかどうかや、気晴らし
が十分できているかなどを必ず確認して
みてください。
一方、リキみはあるけれども力を抜こう
と思えば抜けるという方は、リキみが癖
になっている可能性があります。
集中してお仕事をしているときなどに、
肩に力が入って上がってしまってはいな
いでしょうか。
こまめにご自身でチェックして、息を吐
き、力を抜きましょう。
繰り返すことで脳を再教育し、リキみの
癖を解消できれば、もっと楽にお仕事を
こなすことができ、必要以上に疲れなく
て済むかもしれません。
ぜひやってみてください。
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