睡眠のなぞ
暑かったり肌寒かったりと気候が落ち
つかないので、体調がすぐれない方も
多いのではないでしょうか。
気温の差が7℃以上になると健康な人
でも自律神経の対応能力の限界を超え
てしまい、疲労感を感じやすくなると
いわれています。
必ず上着や寝具で調整して、カゼなど
ひかれませんようにご自愛ください。
さて、程度やタイプはさまざまなれど
よく眠れなくて困る、というご相談は
とても多いものです。
不眠症は日本人の国民病ともいわれ、
一般成人の3〜4割、60歳以上では
半数以上の方に不眠症状が認められる
そうです。
不眠のため睡眠薬を服用している方も
成人の5%におよぶといわれます。
ただし不眠だというとき、多くは患者
さん自身の自己申告であり、全く眠れ
ていないのか、眠れてはいるが感覚的
に熟睡感がない状態であるのか、病院
での検査で診断することは大変難しい
ようです。
睡眠脳波検査では頭部に電極を貼りつ
けた状態で眠る必要があり、そのせい
で眠りづらくなったり、眠りが浅くな
っている可能性を加味しなくてはなら
ないからです。
睡眠の定義は以下の4つを満たす現象
であるとされます。
①睡眠、覚醒という状態が比較的短期
的に相互に切り替わる。
②基本的には眠っているあいだは動か
ない。多くの種属は特有のポーズを
取る。ヒトの場合は横になる。
③刺激に対して鈍くなる。眠っている
あいだは感覚の鋭敏さがなくなる。
④眠らせないでおく、または長く眠ら
ないと、あとから必ずその分を取り
返す。睡眠不足のあとはリバウンド
がきてたくさん眠るというフィード
バックがかかる。
ヒトだけでなく脳を持つ生物はすべて
眠る必要があるそうです。
外界からの危険を回避できないリスク
をとってまで、なぜ進化の過程で睡眠
を必要とするシステムが採用され続け
ているのかは、解明されていません。
睡眠中に脳が休息しているかというと
そうでもなく、睡眠中と覚醒時の大脳
皮質のエネルギー消費量はあまり変わ
らないそうです。
また、眠くなって眠り、ある程度時間
が経つと覚醒するという、睡眠の量を
比較的一定に保つようなメカニズムが
どのように制御されているのかもよく
わかっていません。
身近でありながら謎多き睡眠の科学で
すが、睡眠が不足しているときは思考
回路や情緒、体調などがすぐれないと
いう経験はどなたでも思い当たるはず
です。
慢性的な睡眠不足が、多くの病気のリ
スクを高めることは、よく知られてい
ます。
精神疾患や自律神経疾患だけでなく、
肥満や糖尿病、高血圧や心筋梗塞など
の生活習慣病を招くこともあります。
眠れないことが苦痛であったり、生活
に支障を及ぼしそうであれば、病院で
薬を処方してもらってとりあえず眠る
ということもご一考ください。
睡眠科学の第一人者である筑波大学の
柳沢正史教授によると、以下のことは
確かであるそうです。
・体質的なショートスリーパーは数百
人から千人に1人しかいない
・短い時間で効率よく質のいい睡眠を
とることは無理
・飲酒やカフェインの摂取後の睡眠は
必ず浅くなっている
・理想的には自分に合った時刻に寝て
自分に合った時刻に起きるのがいい
・必要な睡眠時間は人によっても年齢
によっても異なる
・昼間や夕方に眠気がくる場合は睡眠
が足りていない
・おおまかには、ヒトの大人は7時間
前後の睡眠が必要なように脳がつく
られている
時間に追われて、睡眠時間を削るしか
ないという生活の方も、多いだろうと
思います。
ですが、慢性的な睡眠不足は何十年も
続けられるものではありません。
もっと余裕をもてる社会になることが
できたらよいのですが。
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